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こんにちは、はっしーです。
先日地域の勉強会でタイトルにある「発達障害と視機能評価」について演題発表しました。作ったスライドを活用してもっと広く必要な方へお届けできないかと思いブログにも載せることにします。
はじめに
発達障害は非常に診断が難しく、海外では様々な診断方法が確立されておりますが日本国内では診断だけでなく治療・対処法についても数十年単位で遅れていることが問題となっております。発達障害と診断を受けていても実際は少し苦手なだけであったり、通常学級に通っている児童生徒が実は、ということも良く眼にします。診断はついていないが各々の障害の一部の特徴をもつグレーゾーンもよく聞く言葉です。
発達障害である、ではないと決めてかからない柔軟な接し方が重要となってくることを忘れないようにしなければなりません。
発達障害と視覚
発達遅延をもつ小児の眼科的管理の必要性につきましては以前より報告されています。
通常学級において学習・行動に困難を示す児童が6.6%おり、そのうち2.4%に読むことや書くことに困難があることが文科省から報告されています。
また、特別支援学校においても視力が測れない児童生徒が20%いることから、発達障害での視機能評価が難しいこと、学習障害においては適切な視機能の治療や支援により学習への取り組みが改善することなどが報告されています。
発達障害
その定義は、「脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上における機能障害が発達期にみられる状態」を言います。
メジャーなものでは、自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、学習障害の4つがあり、
それぞれ
自閉症スペクトラム:対人社会性やイマジネーションの障害
注意欠陥多動性障害:不注意・多動性・衝動性
発達性協調運動障害:協調運動が苦手で不器用が目立つ
学習障害:読む・書く・計算など特定の学習に困難がある。
とされています。
精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)で、発達障害は、これら4つに加え、知的障害(知的能力障害)、コミュニケーション障害、チック症の3つが加わり、それぞれの障害が単独、もしくは重複して存在することもあります。
学習障害は知的障害と一緒にされることもありますが、学習障害ではIQは高いが書く・読む計算といった特定の学習に困難がある状態です。
学習障害
読字障害ディスレクシア
形態の似た字である「わ」「ね」「れ」やカタカナの「シ」や「ツ」などを理解できない。小さい文字「つ」「や」「よ」を認識できない。文章を読んでいると、どこを読んでいるかわからなくなる。飛ばし読み、適当読みをするなど文章をスムーズに読めないなどの特徴があります。
書字表出障害ディスグラフィア
鏡文字や雰囲気で「勝手文字」を書く。誤字・脱字・書き順の間違いが多い。黒板やプリントの文字が書き写せない、時間が掛かる。感じが苦手で覚えられない。文字の形や大きさがバラバラになったり、マスからはみ出したりする。
算数障害ディスカリキュリア
簡単な数字、記号を理解しにくい。繰り上げや繰り下げができない。数の大きい、小さいが良くわからない。文章問題が苦手、理解できない。図形やグラフが苦手、理解できないなどの特徴があります。
それぞれ単独であること、重複しているものとあります。
これらの学習障害ではどう読むのかという音韻処理と形を捉える視覚情報処理の不全が関係しております。それらを司る部分にワーキングメモリという脳の仕組みが関係してきます。
ディスレクシアと似たような障害として失読症がありますが、この2つには明確な違いがあります。
つまり、ディスレクシアが先天的に読み書き困難な状態を指し、失読症は後天的に読み書き困難になった状態を指します。
ワーキングメモリ
ワーキングメモリとは、脳に取り入れた情報を保持しながら処理する能力のことです。例えば、会話や計算をするときに、相手の話や問題文を記憶しながら、内容を整理したり、答えを導いたりするプロセスで使われるのがワーキングメモリです。
ワーキングメモリには、言語的短期記憶、視空間的短期記憶、言語性ワーキングメモリ、視空間性ワーキングメモリの4つの種類があります。それぞれ、音や言葉、見たものや想像したものを記憶したり、処理したりする能力を表します。
発達障害の方は、何らかの原因でワーキングメモリの発達に問題を抱えていることが多く、その結果、学習にも遅れが生じることがあります。特に、ADHD(注意欠如・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)の方は、ワーキングメモリの働きが低い傾向があると言われています。
ワーキングメモリの働きが低いと、やらなければいけないことを忘れたり、集中できなかったり、段取りを組むことが苦手だったり、会話が通じなかったり、周囲から理解されなかったりする困りごとが生じることがあります。
ワーキングメモリの働きは、完全に固定されているわけではなく、鍛えることで改善する可能性があります。ワーキングメモリを鍛える方法としては、やることリストを作ったり、人を頼ったり、口頭ではなく文書で伝えたり、マルチタスクを避けたり、周囲への理解を求めたりすることなどひとつひとつの物事を整理しやすくして繰り返し身につけていくという方法が有効とされています。
発達障害と視覚の訓練
発達障害と視覚認知については今まで話した通りですが、発達障害をもつ方では、見る力、「眼球運動」が苦手であり、書き写し課題や眼球運動などの訓練が有効とされる報告があります。それらの訓練はビジョントレーニングと呼ばれています。
ですがビジョントレーニングは元々任天堂の商標であり、現在はオプトメトリストが理事をつとめる一般社団法人ビジョントレーニング協会が一部譲渡された形で使用されているので今後用いるとすればビジョンセラピーや、意味合いは拡がりますが視能訓練を用いていくと良いと考えます。
話はそれましたがこのトレーニングでは文字や形を認識しつつ衝動性眼球運動を促す訓練も多く取り上げられています。
症例:学習障害疑い?調節障害?
*症例提示ですが、内容はかなり加工したフィクションのものです
通常の検査においては特に問題がありませんでしたが
近見視力を測ってみますとこのような結果となりました。
そこから調節麻痺をすると遠視が隠れておりまして
調節緊張であったことが分かりました。そこで完全矯正で眼鏡処方が行われました。
その結果、療養とレーニングもできるようになったというものです。
もちろん、元々から調節麻痺から発達障害とされていた可能性も否定はできませんが
冒頭で申し上げた通り、視機能の適切な治療や支援により訓練参加がうまくできるようになった1例としての紹介です。
発達障害疑いでも適切な視機能評価を受ける(行う)
適切な視機能評価を受け(行い)、眼鏡装用などの指示が出た場合、その眼鏡においても適切に装用できているかを眼鏡店含めケアし続けることが重要になります。
一般の方で本記事をお読みになられた方、発達障害(疑い)のお子さんがおられて調べられてる方、もし眼科で視機能評価をされていないのであれば一度検査を受けてみられてはどうかと思います。しかし発達障害の分野は冒頭で申し上げました通り日本でのアプローチは欧米にくらべて遅れており我々視能訓練士の中でも知識がこれからという部分も多いですので行かれる眼科によっては対応が難しい場合もあります。発達に気がかりな部分がある場合、まずはいきたい眼科へ電話で問い合わせてみてはどうでしょうか。
以上、発達障害(主に学習障害)と視機能評価についてまとめました。
引用・参考文献は各図に記載しております。